この本は素晴らしい。マークピーターセンさんが、 長年日本で暮らし日本人が書いた英語の添削などをするなかで、 日本人の英語にありがちな間違いを指摘してくれる本。 (一部、「ほんとかな〜?」と信じられない記述もあるんだが)
こんなことが書いてある。
英語は数に対してものすごく厳密に述べたがる言語。 冠詞(aとかtheとか)重要。日本人は冠詞を「名詞のオマケ」ぐらいにしか 考えていないようだが、ネイティブにとっては むしろ名詞の方がオマケぐらいの勢い。
I introduced the coach of my tennis club to an ex-wife of my brother.
何気なく訳すと「私は私のテニスクラブのコーチを 私の弟の離婚した妻に紹介した」だが、 この文から読み取れることは他にもある。
まず、the coach と書いていることから my tennis club にはコーチが 1 人しかいないことがわかる。 もし、my tennis club にコーチが複数いるのなら、 a coach(たくさんいる中の1人) と書く。
次に、an ex-wife と書いていることから、弟は少なくとも二回離婚している ことがわかる。もし、一回しか離婚していないのなら、 the ex-wife と書く。
何の前触れもなく指し示すものが明らかになってない状態で the を 使うのは「あの件だけどさ〜」と突然話しかけられるのと同じで、 どの件の話なのか全くわからずネイティブはものすごくイライラする。
Get in the car!(車に乗れ!) Get on the train!(電車に乗れ!)
のような in と on 使い分けがなぜ起きるか。
in は中に入り込んで対象物と比較的密に関わる イメージで、on は対象物との接触が平面的で あまり深く関わらないイメージ。
つまり、car の方は、車に乗ってその車の運転に 何か影響を及ぼす可能性がある(密な関わり)から in。
train の方は、ただ自分は荷物として運ばれるだけで 「乗る」という行為に関してはその電車と 深いつながりが起きないから on。
out と off は in と on それぞれの逆。
Clean out your desk!(机の中を綺麗にしなさい) Clean off your desk!(机の上を綺麗にしなさい)
回転軸が垂直なのか水平なのかの違い。
She turned around.(彼女は振り向いた) She turned over.(彼女は寝返りした)
日本語は時制の表現が曖昧だが、英語は時制の面も 非常にきっちりと表現したがる言語。
Before I went to Beijing, I studied Chinese. (北京へ行く前に、中国語を勉強しておいた。) Before I go to Beijing, I am going to study Chinese. (北京へ行く前に、中国語を勉強する予定である。)
の前者(went)において、日本語では「北京へ行った前に」とは 決して言わない。
My sister studied English. (私の妹は英語を勉強した。(そして今は勉強していない)) My sister has studied English. (私の妹は英語を勉強した。(そして今その効果が持続している))
この辺り、
を数直線を使ってそれぞれの違いを非常にわかりやすく説明してくれる。
未来形(未来完了形)なども同様。
関係詞を上手に使った文章は非常に洗練された印象を受ける。
制限用法と非制限用法の区別をしっかりしましょう(アメリカでも 乱れている)。
制限的用法(コンマなし): The Nobel Prize which I received last year was a great honor. (他にもノーベル賞を受賞したことがあって) 前に受賞したやつはともかく、今回のものはとても光栄でした。 非制限的用法(コンマあり): The Nobel Prize, which I received last year, was a great honor. 私が去年受賞したノーベル賞はとても光栄でした。
制限的用法の方は、他の物の存在も暗示され、 たくさんあるなかで「○○な物」という限定をする意味になる。
非制限的用法の方は、単純に先行詞にもうひとつの説明を 付け加えるのみ(たくさんある中のコレという暗示を行わない)。
発音するときは「コンマあり」の方はコンマのところで 一息置く。
His solutions to a number of problems that he found were very creative.
だと、「彼が見つけた」のが「solutions」なのか「problems」 なのかがハッキリしない。
solutions を彼が見つけたのであれば
The solutions that he found to a number of problems were very creative.
problems を彼が見つけたのであれば
His solutions, to a number of problems that he found, were very creative.
とするとハッキリする。
日本人は論文などに受動態を使い過ぎだが、 受動態は著者が自分の書いたことに対しての 責任を回避しているような印象を与えるので、 能動態で自信を持って力強く書くべき。
ダメな例: The following results of this experiment were obtained:... 良い例: We obtained the following results in this experiment:...
また、受動態にすると主語と述語の距離が離れてしまって 意味がとりにくくなるという観点からも受動態は控えるべき。
同じく日本人の論文には "Especially, ..." という 表現が多いが、Especially にはコンマで後に続く文 に仕切られた、自立した「句」として働く使い方は存在しない。
日本人は「したがって」の意味で "Accordingly, ..." とか "Consequently, ..." と 書く人が多いが、半分以上は不自然。
Accordingly の語源の accord は "to be in harmony with"(調和する) という意味なので、「〜に応じて」「〜に相当して」などの 「ある状態に合わせる」という意味に使うことが多い。
Consequently は「ある状態の当然の結果として、何かの状態になる」 の意味。 as a result と同義。
"Therefore, ..."は論文に向いているとはいうものの 少し堅すぎる(重苦しすぎる)。
so は、かなりくだけている。「だからさ」に近い。ので、論文などの 堅い文章には不向き。
Since、Because は論文向き。
as は意味が曖昧になる(〜しながらの意味の場合もある)ので、 使わない方が良い。
thereby は論文にはふさわしい。「この特定の行為によって」の意味。
thus も論文で良く見かけるが「このようにして、こうして」の意味。
hence は論文にとてもふさわしい。「ある状態によって」の意味。
といった具合に、「ネイティブの感覚」というのをしっかり 日本語で説明してくれる素晴らしい本。
大学の初期の段階で読んでおきたかったと非常に後悔している。 英文を読み書きするする際、これらの知識を知った状態と 知らない状態では、英語の上達度/理解度に 大きな差が生まれる気がする。
この春、大学に合格した新入生はぜひ読んでおくと良いと思う。
もう一つ、特に「理系」の大学一年生におすすめしたいのがコレ。
哲学の入り口として非常に良い。
数学と芸術(遠近法)の関わりとか、 文化人類学とか言語学などとの関わりが見えてくる本。
私は社会人になって、ITの仕事をするようになって オブジェクト指向の抽象化とかモデリングというものを 勉強しているうちに構造主義にたどり着いた(といっても オブジェクト指向とは関係ありそうな無さそうな、、、) のですが、構造主義のことを大学の早い段階に知っていたら、 大学での勉強がもっともっと奥深く面白いものに なっただろうに、と非常に後悔している。
ので、ぜひ大学生に読んで欲しい。